はじめに

K林です。

昨年に引き続いて、今年も佐渡ロングライドに参加しました。

 

イベント概要

佐渡ロングライド(SLR)は佐渡ヶ島を走る自転車イベントです。今年は5月12日(日曜)に開催されました。

距離に応じた4種類のコースが有ります。

 

コース名 距離[km] スタート ゴール ルート概要
A 210 佐和田 全島一周
B 130 佐和田 両津から国仲平野を戻る
C 100 佐和田 両津 大佐渡を廻って両津まで
D 40 佐和田 相川 AS 折り返し

 


※2013年佐渡ロングライド WEB ページより引用

 

僕が参加したのは A コース(210km)。

昨年は B コース(130km)に参加したので今年はその上に挑戦してみたのですが、この 80km 差というのは予想以上に大変でした。

計画

SLR A コースは18時までにゴールしないといけません。

これから逆算して途中休憩所(AS, BS)における目標通過時間を決めるとだいたいこんな感じになります。
 
  6:00 佐和田スタート
  8:00 までに入崎 AS を通過
  9:40 までにはじき野 AS を通過
11:00 までに両津 BS を通過
12:00 までに姫崎を通過
15:00 までに小木 AS を通過
17:00 までにゴール

 

ゴール到着を1時間前倒しに設定しているのは、余裕を見るためです。

平均速度は 210km ÷ 11h ≒ 19.1km/h 以上を一つの目安とします。

 

さて、僕はどこまで走れるかな。

 

実走

出走前

今回はS水さん、M野さんと一緒にツアーを組んで参加しています。


出走待ち時

 

S水さんは数日前まで風邪引いていて病み上がりなのでマスクしています。でも、その割に半袖で過ごしていたりします。大丈夫かな。

写真では判りませんが、この待機中って結構寒いんです。気温は 12 ℃くらいだったかな。僕はウィンドブレーカー羽織っていましたが、S水さんはそういう防寒対策も有りません。

風邪がぶり返さなければいいのですが。

ところで僕はヘルメットがちゃんとかぶれていないな。

 


6:05 に佐和田をスタート。

周囲の参加者の雰囲気に呑まれて、のっけから 30km/h 程度で走ってしまいました。

これは自分の普段のペースからすると飛ばし過ぎです。本当ならここは足慣らしとしてもっとゆっくりと、せいぜい 25km/h 程度で走らなければいけません。

案の定 5km も走らないうちにバテてしまいました。阿呆です。SLR コースの特徴が生かせていません。

プロファイルからもわかるように、佐和田を出発してから 20km の相川 AS あたりまではせいぜい 5% 程の傾斜しか現れません。この区間は足を暖めるために有るようなものです。

1時間ほどで相川 AS に到着。ようやく温まってきた脚を無駄に休めたくないのでトイレに立ち寄る程度で直ぐに出発します。

 

7:00 時点
走行距離累計 : 20.0km
全体平均速度 : 22.1km/h


相川 AS を過ぎてもしばらくはたいした起伏が有りません。尖閣湾を左手に見ながらのんびり進んでいきます。

このあたりまではほとんど S水さんが先頭を引張ってくれました。

いやー、力があるペースメーカーが先導してくれるのは心強いものですね。雑念に気が散らされることなく走りに集中できます。

7:50 頃に入崎 AS に到着。ですが脚の調子が良いのでこの AS には立ち寄らずそのまま走りを続けます。

 

8:00 時点
走行距離累計 : 46.8km
全体平均速度 : 24.5km/h


入崎から先では S 水さん M 野さんの前を走ってみました。

ペースメーカーの走り方というのがよく解っていないので、先ほどの S水さんの走りを真似てみます。大体 28km/h 程度のペースを保ち、平地で飛ばしすぎず、坂道で極端に遅くならならず、安定した走りになるよう注意しました。

 

ところでこの区間には SLR を象徴する二つの景色が現れます。"Z坂" と "大野亀" です。

Z坂は印象的なネーミングと写真映えする姿から、SLR といえば必ずと言って良いほど話題に取り上げられます。でも登坂に挑むという見方からすると、見ての通りそれほど大した傾斜では有りません。ローギアでカリカリ回せばそれほど苦もなく上れます。

 


Z坂遠景(よく見ると坂に人が居ます)

 

そしてその次に現れるのが大野亀。その名の通り亀のような形をした大岩です。

単にデカイ岩、と言ってしまえばそれまでですが、僕のお気に入りの場所です。迫力が有るんです。

でも残念なことに、大野亀の迫力はなかなか写真に収まってくれません。少なくとも僕の腕ではとても無理で、どう頑張って撮っても単なる石ころにしか見えません。

なので、写真掲載は止めておきます。もし興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、事前にガイドブックなどで写真を見ることなく直接実物を見に行かれるのをお勧めします。

 

そして更に、もし見に行かれるのならば、SLR のコースと同じように外海府を南から弾崎に向かって走って行くのを強くお勧めします。下の写真に示す "北鵜島(きたうしま)第3トンネル" を通り抜けたところで、眼の前に大野亀が姿を現します。

これがもう "やるなコンチクショー!" って唸るくらいカッコいいんですよ。

 


このトンネルの向こうに大野亀が御座します

 

...って、なに興奮してるんだ、俺。

熱入りすぎ。

多分この気持ちは SLR に参加した方にしか解ってもらえないだろうと思います。

 

でも、"大野亀推し" をもう一つだけ。

というのも、ここは僕にとって「惜しい」感が非常に強い景色なんです。勝手な希望を言わせてもらえば、大野亀にはもうひと工夫欲しい。

あの大岩が地上 20 mくらいに浮かんでいてくれれば。そしたら完璧なんだけどなあ。

理想は ↓ こんな感じ。僕はいつも大野亀を見るたびに頭の中でこういう姿を想像しています。

中二病という奴なのかもしれません。

 


Le Château des Pyrénées 大野亀

 

9:00 時点
走行距離累計 : 68.6km
全体平均速度 : 23.6km/h


大野亀を超えると、佐渡ヶ島最北端の弾岬(はじきざき)です。

ここにある「はじき野 AS」は、塩むすびがとてもおいしいことで有名です(※あくまで個人の感想です※)。

 


ごま塩だけで超美味い

 

昨年初めて SLR に参加した際にはここのおむすびを食べて感動し「来年も絶対食べに来る!」と心に誓いました。

もしも「来年以降 SLR に参加しよう」と検討されている方で、お米好きという方がいらっしゃいましたら、是非ともはじき野 AS に立ち寄りここのおむすびを食べてみてください。

言い換えれば「美味しいお米が好きな方は、来年 SLR へ参加された方が良い」ということかな(※あくまで個人の見解です※)。

 

ただ、おいしいからといって食べすぎには注意が必要です。

昨年僕はそれで胃が重くなり、ここの AS 以降走りづらくなりました。

今年はほどほどにして出発します。

 

10:00 時点
走行距離累計 : 87.6km
全体平均速度 : 22.4km/h


はじき野 AS から両津までの区間は下り主体の 30km。楽といえば楽ですが、どちらかというと退屈な道です。

山の上にあるはじき野 AS をから下っていくと、景色がどんどん移り変わっていきます。今は山中、今は浜。今は鉄橋渡るぞ、と思う間もなくトンネルの闇をくぐるとじきに両津に到着します。

両津港に近くなると車の量が増えてきて、主要な交差点やカーブでは SLR スタッフが注意深く交通整理をしています。AS といい周辺道路といい、こういった多くのスタッフのおかげで安全で快適な自転車イベントが実現できているんだなあと改めて思います。

本当にありがたいです。

そして 10:35 頃に両津 BS に到着しました。

ここまでの平均速度は 22.8km/h。目標は 19.1km/h 以上ですからなかなか良いペースだといえます。

 

11:00 時点
走行距離累計 : 102.0km
全体平均速度 :   20.8km/h


両津 BS ではお昼ご飯を頂きます。

両津湊の "おんでこドーム" の中では弁当やらカットフルーツやら汁物やらいろんな食べ物が振舞われています。

 


お昼ご飯中

 

ところで、このレポートをお読みの皆様にここで悲しいお知らせが有ります。

M野さんがリタイアすることとなりました。

実は M野さんは SLR 参加前に左肩を怪我されていたのですが、その痛みがひどくなってきたのです。残念ですが、無理して走って悪化させてはいけません。

じっさい、これまで 100km 走ってきたというのもフツーに考えれば凄い運動量です。そりゃ身体に響くのが当たり前というものです。

 

というか、他人事(ひとごと)ではありません。

自分の事も心配です。はたして僕は残る 110km を完走出来るんだろうか。

今年に入ってから練習で何回か長距離を走ったのですが、これまで 210km を走り切れたためしが有りません。たいてい 140 ~ 150km でダウンしていました。

ここまでは何とか来られましたが、これから先が問題です。一層注意して行きましょう。

 

まずは去年のはじき野 AS で食べ過ぎて失敗したことが思い出されます。

満腹で走ると眠くなる恐れがあるので、昼ごはんはカットバナナ数個で「腹三分目」くらいにしておきました。途中の AS で少しずつ食べるようにしましょう。

 

11:20分ころに両津を出発。

ところが。

 

出発して十数キロ、姫崎を前にして S水さんに付いて行けなくなりました。

 

12:00 時点
走行距離累計 : 115.7km
全体平均速度 :   19.6km/h


昼飯を済ませ、両津から 15 ~ 20km 地点。

どうも変な感じがします。

本来なら休憩していた脚の筋肉に力が戻ってきても良さそうなものなのですが、なんかスカスカした感じで全く力が入りません。それになんか気力も沸きません。

というところで、ハッと気づきました。もしかしてこれはハンガーノック(低血糖状態)かもしれません。

食いしん坊の僕は、ツーリングに行くと「あっちで天蕎麦」「こっちで大福(粒餡)」などと食べまくることが多いので、幸か不幸かこれまでハンガーノックというものを経験したことが有りません。

でもこの状態「お腹が空いたという感じは無く、身体に力が入らなく、気力も落ちる」というのはハンガーノックのように思えます。

とりあえずサイクルジャージの背中ポケットから携行食品を取り出し、食べながら走りました。

 

この辺りは大した坂も無いというのに、区間平均で 22km/h ほどしか出ていません。朝 8 ~ 9時台の Z坂~大野亀と大差無いとは情けない。

改めて多田 AS で休憩。ゴハンを食べ直すことにしました。

 

13:00 時点
走行距離累計 : 137.6km
全体平均速度 :   19.9km/h


多田 AS ではおむすび 5, 6 個にカットフルーツ数個、そしてスポーツドリンクをいくらか補給。食べ物が栄養に変わって筋肉に届くにはどれくらい時間を見積もればいいんだろう...、スポーツ医学をも少し勉強しておくんだった。

時間がもったいないので食べたらすぐに AS を出ます。すると間もなく血糖値が上がり始めたらしく猛烈に眠くなりました。身体は休みたがっているのでしょうが、そういうわけにもいきません。半分眠りつつトロトロと漕ぎ進みます。

上の GPS ログを見ると相変わらず遅いですね。10分で 3 ~ 4km ほどしか走れていません。ほとんど起伏が無いこんな道路を 18 ~ 20 km/h でしか走れないなんて、我ながらとても信じられません。

この辺りでは他の多くの走者に抜かれまくっていました。

 

14:00 時点
走行距離累計 : 150.1km
全体平均速度 :   19.0km/h


今こうやって走行ログを見返すと、14時時点での平均速度は目安としている 19.1km/h を下回っていたことが判ります。両津からここまで比較的平坦なコースだったことを考えると「如何に調子が悪かったか」を如実に反映しているようです。

 

しかしそのうち、150km を越えたあたりで、眠気が消えてきたかと思ったらじわりと脚に力が戻ってきました。理屈は良く判りませんが、おそらく筋肉に栄養がようやく届いたんでしょう。少しずつスピードが上がってきます。

気力も復活。先ほど僕を追い抜いたサイクリストを見つけると、仕返しのように抜き返したりしてました。

 

いい調子です。先ほどの遅れを挽回して行きましょう。小木 AS では休憩を取らず走りを続けました。

 

15:00 時点
走行距離累計 : 170.6km
全体平均速度 :   19.2km/h


ゴールまでのラスト 40km はプロファイルを見ての通り、山越え3連発です。

特にこの一番最初の坂(上大浦)が、きつかった。こうやってプロファイルデータで見ると 2km 強しかありませんが、延々と続いていていつ終わるか判らないように思えました。

 

そういえばこの坂を上り始めたとき、どこからか和太鼓の音が聞こえてきました。

最初は、どこかで和太鼓演奏の練習をしているのかと思っていました。ドン、ドン、トントンドン。と、単調なリズムでずーっと繰り返しています。

実は僕は片耳聾なのでどこから音が来るのか方向が判りません。坂道をハァハァ息切らして上りながら、どこで鳴っているのか、右か前か、上か左か考えていましたが全く判りません。

けれどそのうち、どうも坂を上るにつれて音が大きくなってるらしい事に気づきました。そして案の定、坂のほぼ頂上、"長者ヶ原遺跡" のあたりの家で、太鼓をたたき続けているお兄さんが居ました。サイクリストへ地元の方が応援しているようです。

無茶苦茶嬉しい。こちらからも「ありがとお」と叫びます。

和太鼓って、バチが太くて叩くのに手力も腕力(かいなぢから)も要ります。どのくらい長い間サイクリストを応援しつづけているのか分かりません。大変だろうに。凄いもんです。

こちとら自転車で坂道上っているとはいってもせいぜい 10分 20分の事。「へたばってる場合じゃないな」と思いました。

 

その後坂を上り切り、ピューっと下って、素浜 AS で水分補給。

そしてまたすぐに出発します。

 

16:00 時点
走行距離累計 : 186.0km
全体平均速度 :   18.8km/h


素浜 AS では自分の体力と残り時間を測り、「おそらく大きな問題が無ければ完走は出来るだろう」と見積もっていました。しかし山越えが効いて平均速度はついに目安の 19.1km/h を下回っています。しかも残りは 20km 強で 2 つの山越え。これまでの疲労の蓄積を考えると一時間で走りきるのはかなり難しそうです。ゴールは 17時を少し超えるくらいでしょうか。

けれど...、こうなると少し欲が出ます。ここは敢えて「17時までにはゴールする」という当初の予定に挑戦することにしました。

 

AS を出るとすぐさま山道を上ります。相変わらずきついのですが、先ほどの上大浦に比べると幾分マシです。コツコツと地道に上ります。

そして下り。気を抜きたいところですが、ここでも漕がなきゃ予定時刻に間に合いそうに有りません。下り坂は得意ではありませんが、出来る限り飛ばします。

 

最後の山を上るときにはなんかもう感覚が麻痺してました。サイクリストでも "ランナーズハイ" と呼んで良いのか判りませんが、変な高揚感があり「行くぞっ、行くぞっ、行くぞっ」と繰り返し自分に言い聞かせるようにして漕いでいました。そしてちょっとでも傾斜が緩くなるとすぐにギアチェンジして、とにかく力の許す限り速く走ります。

 

そしてようやく最後の山を走り下りると真野湾がすぐ近くに見えるようになりました。この時点で 16:40。スタートからの距離は 200km。なので残りは約10km。

 

17時まで残り 20 分で 10km か。

 

ということは平均時速 30km/h で行かなければいけません。自分の経験上、信号機のある街部の走りでその速度はほとんど不可能に思えます。

心が折れそうになりながら、それでも「いや、17時前にゴールするんだ」と思い、一秒でも早くゴールに着けるように走ります。焦る気持ちを抑え、安全に、確実に、でも可能な限り速く。

スタートから 203km 地点で、見覚えが有る街並になりました。ここは昨年 B コースで走った記憶が有ります。でも記憶が曖昧。ゴールまで残りどれくらいだっけ。

確か橋を左折だった。向こうに見えて来た橋か?...いや、違った。この川(国府川)じゃない。とすると次の川はどこだ?

在った。あれだ。あの橋だ。スタッフが誘導してる。とすると...、思い出した。コースを完璧に思いだした。スタッフの誘導が無くても行けるくらいだ。ゴールはもう近いぞ

 

今更時計見てもしょうがない、というかそういう時間も勿体無いので、ともかく前方と路面だけ見て走り続けます。ここでコケたら一生後悔する。

佐和田体育館の横を通り、佐和田海水浴場沿いの道路に出ればあとはゴールまで一直線 500mです。ゲートが近づいてきました。

あ、ゲート手前に S水さん、M野さんがいた(笑)。

俺ヘルメット曲がってないかな。ちゃんとかぶれてる?

 

ゴール後

ゴールは 16:56。なんとか 17 時にはギリギリ間に会いました。

この時点での走行距離累計は 207.8km、全体平均速度は 19.2km/h。

200km 地点から考えると、7.8km を 16分で走ったことになります。逆算すると時速 29.3km/h。Aコースの最後で、しかも街走りでこれだけ走れたというのは我ながら良くやったと思いますが、運も沢山味方してくれました。

もし信号タイミングが悪かったらおそらく 17時には間に合わなかったでしょう。

 

そして。

 

我々 3 人より遅くスタートした 0湖さんも、17:50 に無事ゴール。

チームジャージを着た 4 人で記念写真を撮ります。

 


なんかグダグダだ(笑)
(ちゃんとした記念写真を見たい方は、上の写真をクリックしてみてください)

 

初めての A コース 210km はきつかったけど楽しいものでした。今にして思うとハンガーノックも最後の焦りも良い経験です。勉強になりました。

来年は全体のバランスを考えて、もう少し上手く走れるようにしようと思います。

 

謝辞

最後に心からお礼。

僕を含めた自転車集団を引っ張って行ってくれた力量のあるサイクリストの方々、沿道で応援して下さった佐渡の皆様、そして SLR スタッフの皆様。

僕が実力以上の力を出せて 210km を走り切れたのはあなたたちのおかげです。

本当にありがとうございました。

来年も楽しみにしています。