大平峠から鳩打林道サイクリング
2011年8月13日
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レポート本文

実施日 2011年8月13日(土)
コース概略 輪行〜南木曽駅〜妻籠宿〜R256〜大平(おおだいら)峠〜大平宿
〜鳩打林道〜飯田市天竜峡近く
計画46Km
天候 晴れ

 この2年ほど峠道へのサイクリングの機会が増えてきた。登っている時は苦しいが、日が経つとまた行きたくなる。昔の山登りと同じ様な感覚である。登り切った時の達成感がなんとも良い。サイクリング関係の雑誌記事で、ある人が「峠道を走る時の起承転結のメリハリが堪らない」と言っていたが、なんとなく解る様な気がする。

 今回は100歳で亡くなった伯母の一周忌への参列に引っ掛けての計画である。昨年の四十九日の法要の際は、茅野から杖突峠を越え、この度は南木曽から大平峠を越えての飯田入りである。遊び半分での法要出席で誠に不謹慎、仏罰があたる懸念もあるが、優しかった伯母のことであるので、喜んで応援してくれるだろうと勝手に解釈している。

 新幹線、中央本線を乗り継いで、9:50南木曽駅に降り立つ。曇り、晴れ一時雷雨と日が近づく度に予報が変わってきたが、今日は晴れのまずまずの天気である。自転車を組み立て、バックパックを後部ラックに取り付け、10:30南木曽駅スタート。大平峠まではおよそ21Km、950mの登りである。R19号線を妻籠方面に南下する。19号は相変わらず交通量が多い。15分ほどでR256との分岐点に到着、ここを清内路、飯田方面に左折する。

 妻籠宿は4年程前に来たことも有り、夏休みで人通りが多いので大部分をパスし街道筋の一部を走る。妻籠を過ぎるとすぐにR256に再び合流、観光のマイカーやトラックの行き交う幹線道の登りとなる。7%弱の登り坂が5Kmほど続く。ここは今回のサイクリングを通して、一番平均勾配の大きい区間である。首には水を浸み込ませたひんやりシート、潮熱サプリ入りの天然水を度々口にするが、暑さが堪える。スピードも上がらない。南木曽から1時間ほどかかり、R256から旧道への分岐、尾越に到着。およそ8Kmに1時間かかったことになる。遅い。

 旧道は広瀬川に沿った道幅1.5車線ほどの道で、交通量も少なく、山裾に造られたR256よりアップダウンが少ない分勾配が緩い様だ。たまに地元の人の車が通う田舎道をのんびり進む。昔ながらの郵便局、製材して乾燥のため立並べられた材木、家々から顔を覗かせる人の好奇の眼差し、旅情を感じる。

 南木曽駅をスタートし1時間50分、標高880mの大平峠への入り口に到着、南木曽から、およそ450m登ったことになる。大平峠は標高1,358m、ここは南木曽と峠の丁度中間地点。ひと休み栄養補給とする。

 峠への登り道は頭上を木々が覆い、吹く風が涼しい。景色の望める場所はほとんど無い山中のみちである。

 舗装の道幅は1.5車線ほど、交通量はたまに登り下りの乗用車に出会うくらいで少ない。トラックの様な大型には一回も出会わず。

 13:30峠の2Kmほど手前の木曽見茶屋に到着。木曽見と言う位で、ここで初めて遠くの景色が、しかも、木曽方面だけ見渡せる。山菜そばを注文し、休憩とする。思ったより時間がかかった。法事用の礼服一式など、いつもより荷が多く、後部のラックや括りつけたバッグが重たい様だ。坂の途中で立ち止まった際など、ハンドルを少し持ち上げると、そのまま後ろにひっくり返りそうになる。

 30分ほどの食事休憩の後出発。14:15大平峠到着。サイクリング雑誌などでよく眼にするトンネルが現れた。トンネル上部に土が無い、シェルターの様なトンネルである。ドームの上のプレートに「木曽峠」とある。大平峠の別名である。傍の路端には、「大平街道」の石碑が建っている。往時の賑わいから生活道路としての機能を失い、いまでは訪れる人もそう多くない観光道路と化した街道を、ずっと見つめてきた石碑である。

 峠を4Kmほど下ると旧大平宿に至る。古い民家が点在している。街道の衰退とともに、路線バスがなくなり、郵便局が閉鎖され、ついに昭和45年には、住民の総意として集団移住が行われ、250年の歴史に幕を閉じたそうである。現在は有志により「いろりの里 大平宿」として維持され、今日も避暑の泊まり客で賑わっている。

 大平宿から、飯田市、伊那谷方面へは、もう一つ飯田峠を越えて行く従来の大平街道の他に、黒川、茂都計(もつけ)川沿いを行く鳩打林道を経由するルートがある。道は全長9Kmと長くないが、人手が余り加えられてないダート道で、かなりマニアックな林道らしい。宿の管理の方に、この自転車でも行けそうかと尋ねたところ、大抵はマウンテンバイクの人達らしく、私の様な細いタイヤ(それでも28C)は見かけないとの話であった。ここから天竜峡方面へは、飯田峠越えに対し、1/3ほどのショートカットになる。16:30の法事の始まりに余り余裕がないこともあり、時間短縮と判断し、林道を行くことにする。

 林道は目の細かい砂が踏み固められたダートで、砂の中に石が交じり時々車輪が乗り上げる。砂も柔らかい部分があり、この様な場所では、ハンドルをとられてしまう。ガードレールやカーブミラーは一切なく、所々で路肩が崩れ、谷に落ちている。遥か下に峻烈な水の流れがある。クルマのすれ違いが出来そうな場所はほとんどない。そう言えば、大平宿方面からは車止めの看板があった。山からの水の流れが道を横切り、渡河ポイントも多い。従ってひと時も気が抜けない。谷に転落しても誰も見つけてくれないと思い、なるべく山側を走る。ほとんど緩やかな下りであるので、右足をペダルに載せ、トップチューブに軽く腰掛け、転倒しそうになれば直ぐに左足が着ける様な体勢で走行する。お陰で、ダートを降る時のコツを掴んだ様な気がする。

 5Km程降ると今度は登りとなる。登りつめたところが鳩打隧道である。2年ほど前、トンネルの出口が崩落し、今年2月に復旧したとのことである。トンネルの中は太陽光発電による照明が施され、あまり明るいとは言えないが、舗装もされており、それまでのダート道とは雲泥の差がある。ここから大平宿までの間を鳩打林道と言うらしい。パンクも転倒も無く良かった。

 時間短縮でこの道を来たが、ダートでスピードが出せず、本当に短縮出来たかは疑問である。しかし、緊張を強いられ、そのスリルは久しぶりに味わった快感である。病みつきにならねば良いが。

 トンネルを抜けると舗装された下り坂が続く、降り切ったところに飯田国際射撃場があり、パンパンと発射音が聞こえる。鳩打と射撃場の組み合わせがなんとも面白い。田舎の道も最近は何処も素晴らしい。特に、下りでは、油断すると、どんどんとんでもない方向に行き過ぎてしまう。間違った先には旧来の田舎道が待っており、行き止まりを戻ったりしながら、16:30目的地到着。

 大急ぎで持参の黒服に着替え法事に参列。坊さんの到着が遅れていたこともあり、「あいつは自転車でやって来て、お経に遅れたが、酒の席だけは間に合った」とのそしりを、なんとか免れることが出来ました。

「仏より ホントは怖い 生き仏」

本日走行距離52Km

- N沼 -


大平峠から鳩打林道サイクリング
2011年8月13日
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