最終更新日: 2008年2月2日
クラブラン>2007年>10月 クラブラリー in 南木曽
クラブラリーin南木曽れぽーと
はじめに
 歴史にも文学にも疎い僕にとって「木曽路」というのはよく判らない場所だった。名前は聞いたことがあったがそれほど興味が湧いたことがない。長野の山の中、という印象があったので黒部ダムの近くかなと思って調べたら全然違う。あらためて自分が地理にも疎い事を思い知らされた。
そんな木曽路を、今回クラブラリーで走ることになった。どんなところか楽しみだ。

27日 雨の木曽路
27日のクラブランは中央本線 木曽福島駅からスタート。あいにくの雨だがそれほど強い降りではない。これなら何とかなりそうだ。雨の中走るのはもちろん大っ嫌いで自分一人ならまず走らない。前日から憂鬱で堪らなかったが、駅に着く頃には腹を括っていた。これもいい経験になるに違いない。プラス思考だ。

駅でみんなと自転車を組み立てていたら、50歳くらいのおっちゃんが話しかけてきた。なんでも仲間と木曽川沿いを歩くらしい。僕らと似たようなルートだ。うーん、そんなファンまで居るとは...。そんなにいいのか?木曽路。

 さてみんなの準備が整ったのが11時20分頃、出発だ。ここから吾妻橋までは木曽川に沿った30km程度の緩い下り。駅から国道19号線に出て、雨の中注意しながら走り始める。最初はブレーキの効きやら路面の滑りやらチェックするのに気を取られていたが、そのうち少しずつ余裕が出てきた。

景色を眺めると、なるほど人を惹きつけるだけの事はある。いい景色だ。さっきのおっちゃんみたいなファンがいるのも頷ける。あいにくの雨降りとはいえそれはそれで悪くない。というか、「雨に濡れるのはイヤ」というだけで、雨が降る山の景色はそれほど嫌いじゃない。
山腹を上っていく風が霧を生み出していく様子は迫力があり、遠くに霞む山々は墨絵のような静けさがあり、どちらも素晴らしい。雨天走行はこの先もそう無いだろうし、折角だからこの景色を堪能しようと言う気分になっていた。

出発して30分程で上松町につき、寝覚の床で昼ご飯を取ることにした。越前屋で新蕎麦を頂く。旨い。蕎麦湯も旨かった。

 1時間弱ほど昼ご飯休憩をした後店を出て、相変わらずの雨の中を走り始める。走行自体に影響が出るほどの降りではないが、困ったのは服の中にまで雨が浸み込んできたことだ。この分だとじきにずぶ濡れになるだろう。しかも道は大半が下りなので、体力を使わない分だけ風で冷やされる。体を温めよう、と可能な範囲でペースを上げて走った。そして下着まで濡れきった頃、次の休憩地点「道の駅大桑」に到着した。

今更ではあるが、もしここでレインウェアが売ってたら有り金はたいてでも買ってやる。と意気込んで店に入ったがさすがに売ってない。しょうがない、ホット缶コーヒーでも飲み出発するか。と思った時、なにやら盛り上がっている声がするのでその方を見てみると、W辺会長が草鞋に履き替えていた。面白い。味のある事をする方である。

ちなみにこの頃にはみんな(程度の差はあるものの)雨具に限界が来ているようだった。その一方で雨の勢いは増してきている。ここから先は一層辛い走りになりそうだ。

辛いといえば、書き忘れていた事があった。実はこのルートで経験した災難は雨だけじゃない。交通状況が非常に悪かったのだ。路肩が狭い割には大型ダンプが頻繁に走っているので緊張と恐怖の連続。フードで耳が覆われていて後ろから来る車の気配がいつもより判りにくいのもストレスだ。掛け値無しに僕にとってはこれまで走った中で最悪のコンディションだった。体は冷える、ダンプには煽られる、路面はいつ滑るか判らない、それに雨天時のブレーキ操作は経験不足で心許ない。

そんな状況にいた僕は「道の駅」から6kmほど先の「十二兼駅」付近でちょっとしたトラブルを起こしてしまう。そして「南木曾」駅で残念ながらリタイアし、クラブラリー会場のホテルまでタクシーで向かうことになる。が、この話はまた後で書こうと思う。

この後、他のみんなはこの悪いコンディションの中ホテルまで走ったらしい。吾妻橋からホテルまでの坂は傾斜はともかく精神的に辛かったとのことだった。そりゃそうだろう。

ホテル木曽路
 全国クラブラリーは南木曽にある「ホテル木曽路」で行われた。ここは立派なリゾートホテルで部屋も風呂も申し分ない。とりわけ温泉は上等で、冷えて疲れた体を癒してくれた。

夕方からは宴会が始まった。参加者は140人を超え、大宴会場がほぼ埋め尽くされていた。最初に今回の幹事役である浦和サイクリングクラブからの挨拶があり、その後いくつか記念すべき話題が出された。還暦を過ぎて日本縦断をした方の話、長野で活躍している雑誌編集者の話、各サイクリングクラブ会長の挨拶などなど、初めてクラブラリーに参加した僕にとってそれらは新鮮で非常に興味深いものだった。しかし宴会が進むと騒がしさで話がほとんど聞き取れなくなってしまったのは残念だった。

宴席で隣に座ったO寺さんから、この「クラブラリー」という集会が同好の志の手により38年も継続してきた話を聞き驚いた。てっきり JCA か何かの後援があるかと思っていたのだ。自主企画だったとは...。堅苦しい表現だが、自転車文化の一つの形態を見ているのだなあ、と思い感慨深かった。参加者の顔を見渡し38年前の姿を想像したりする。1969年か。アポロ11号、ビートルズ解散、巨人大鵬卵焼きの頃だ。その時はどんな自転車に乗りどんな格好で走ったのだろう。

段々宴会場は酔っぱらい比率が増してきた。そんな中、浦和サイクリングクラブの方は司会をするだけではなく各席を回ったりホスト役としてかいがいしい。全くもってありがたかった。これだけ大勢の参加者の宿手配やら雨天中の駐輪場作業やらその他諸々大変だったろう。

そして宴会はお開きとなり一部の人は二次会に突入するのだが、恥ずかしいことに僕は飲み過ぎてしまいここでダウンしてしまう。部屋に戻り早々に寝てしまった。その後真夜中2時頃に喉の渇きで目を覚ますと外には星が見えていた。明日はいい天気になりそうだ。

28日
二日目馬籠峠から中津川へ


 翌日は快晴、気持ちよく走れそうだ。心なしかホテルで自転車を手入れする参加者には「昨日の分まで走ってやるぜ!」というオーラが感じられる。9時前にクラブラリー参加者の集合写真を撮った後、各クラブがめいめいに今日のルートに向かった。うちのクラブは馬籠峠から中津川駅まで向かう。

南木曾温泉付近から馬籠峠までは傾斜6%、距離5km程度、秋の陽差しの平和な上り坂だった。デカい蕪の葉みたいなのが畑に見えたがきっとあれは高菜に違いないぞ。とか、意外と山は紅葉してないな、などと思いながらフラフラ登っていく。途中で女滝男滝に寄ったりしながら10時半頃に峠に到着し、しばし休む。M山さんが美味いコーヒーを淹れてくれた。

さてそこから先は下りが続く。途中観光客でにぎわう馬籠宿を抜け、1時前にはあっさりと中津川駅に到着する。ここは「『栗きんとん』発祥の地」なのだそうだ。よく判らないがいろんな文化が有るものだ。

ここで昼ご飯を食べた後、4時近くまで駅前で時間を潰す。時折クラブラリー参加者とおぼしき人がちら、ほらと通り過ぎる。T桑さんとかW辺会長は顔見知りの人も居たようだが、僕は全然判らずぼーっと見ていた。そういえば仕立ての良いニッカー・ボッカーズを着こなしている方が居たなあ。格好良かった。あれでランドナーに乗っていれば様になるんだろうな。今風では無いがちょっと憧れるぞ。などと考えているうちに、ふと「これが38年前の姿なのかもしれないな」と思った。

そして電車の時間になった。楽しいこと、辛いこと、勉強になったこと、反省すべきこと、色々が有ったクラブラリーはこうして幕を閉じた。

[おまけ] トラブルについて
 今回のクラブランでは色んなトラブルがあった。ざっと挙げてみても

・N島さんの前輪ブレーキシューが馬籠峠越えで擦り切れた
・M川さんが温泉のひげ剃りで指の皮を切った
・H立さんが中津川のそば屋でオーダーを忘れられる
・W田さんがどこかの店で買い物した時におまけで貰った
             コーヒー皿を馬籠峠で割ってしまう
・何人かのデジカメが雨に濡れて故障
・K林が温泉でタオルを忘れているのに気づき、慌てて部屋に
             戻ったが鍵がかかっていて途方に暮れた
などが思いつく。とはいえ、これらはトラブル(問題事)というよりアクシデント(偶発事故)というべきだろう。これらに比べると大した話ではないが、初日のランで僕が招いたトラブルについて少し書きたい。

初日のランは特に後半、過酷な条件だった事は先に述べた。その中で転けてしまったのだ。場所は「十二兼」駅近く、速度は30km/h程度、雨で濡れた段差で滑ったのが原因だ。幸い怪我もマシントラブルも軽かったため事故直後のリカバリーも何とかなったが、転倒後にダンプに巻き込まれていたら大惨事になりかねなかった。

この時、同行のメンバーによる対応は非常に頼もしかった。流石にベテラン揃いと言うべきだろう。僕が自分の怪我の治療に当たっているとみるみるパンク修理が完了する。トラブルを起こしておいて言う台詞では無いけれど、ほれぼれする手際でとてもいい勉強になった。ちなみにT桑さんの高級そうなウィスキー?を消毒に使わせて貰ったのだが有難いやら勿体ないやら複雑な心境だった。

そしてこのリカバリーのおかげで30分後には走り始めるのだが、実はこのトラブルはここで終わりではない。第二弾バースト編、第三弾フレンチバルブ破損編と続くのだが、くどいので割愛する。皆様その節はご迷惑をおかけしました。そしてどうもありがとうございました。

                            Kobayashi