YMCC実践メカ講座
「クランク交換の作業要領について」
制作監修:O湖
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その2 取り付け

本日の材料:左上よりクランク右左、左右ハンガー碗、専用工具「ハンガー碗回し」
クランクシャフトは、右クランクと一体構造になっています。

それでは、左右クランクを取り付けてみましょう


ハンガー右碗を印字された矢印側へ手で軽くねじ込む


逆ねじになっているので、締めるためには反時計回りにねじ込みます

専用工具「ハンガー碗回し」で本格的に締め付ける(反時計まわり)


 ハンガー碗は、ベアリングを介してクランクシャフトを保持する部品です。
食器のお椀に似たその形態から「ハンガーわん」と呼ばれます。

次に左碗をねじ込む(こちらは正回転、時計回り)


左右ハンガー碗とも組み付け終了


上記部分はハンガーとも「ボトムブラケット」とも呼び、略して「B・B」と記します。
ハンガー碗の締め付けは、トルクレンチがあれば正確で便利です。
またトルク値に頼るだけでなく、外れないように締める経験値を養う努力も必要でしょう。
左右碗は、緩まないようしっかりと締める必要のあるため、わたしはネジ部にはグリスを塗らずに締めております。

右クランクを裏から見たところ


右クランクは、クランクシャフトが嵌合され一体構造になっています。
クランクシャフトは、従来のものより外径が太く中空構造になっています。
これらにより、軽量にして剛性の高い効果を得ています。
最近の製品は、上級機種にこの型のものが多くなりました。

また組み付けの際に精度が高く、作業も簡単です。
クランクシャフトを受けるハンガー左右碗は、ベアリングの玉当たり調整が不要です。
従来の「カップ&コーン」型のB・B部では、ボールベアリングとクランクシャフト、ハンガー碗との玉当たり調整に職人的な勘が要求され、これに熟練する必要がありました。

右クランクを挿し入れる、手で押し込むだけ


じつに簡単、挿入はたったの3秒で出来ました


クランクシャフトにはガタつきもなく、きつくて回転の妨げられることもありません。
まったくの手間いらずでありながら、信じられないくらいの精度で取り付けができました。

クランクシャフトには、左クランク脱落防止の工夫が


クランクシャフト側面の左端に見える小さな穴にご留意のこと。

左クランク上端のスリットにも同じく仕掛けが


左クランクをクランクシャフトに組み付けたところ


左クランク頭部のスリットから出っ張って見えるのが左クランク脱落防止装置。
これを押し下げると、シャフト側面の穴に先端が掛かって、クランクの抜けを防止します。

5mmアーレンキーで、左クランク2本のボルトを締める


両ボルトを交互に「均等に」アーレンキーで締めていく


交互に均等に締めること。左クランクの取り付け完了


出来上がり、簡単きわまりない作業でした。


現代のボトムブラケット部は、ハンガー左碗による玉押し調整が不要です。
シールドベアリングと一体化した左右碗にクランクシャフトが保持されるので、ボールベアリングの玉当たり調整も位置決めもまったく不要となりました。

またシールドベアリングによるB・B部は、雨天使用にも長期間使用にもおかまいなしで、グリス交換や、玉押し調整作業の手間と時間を不要としました。
「壊れるまで」手入れ知らずに使用し、「壊れたら」当該部品を交換して再び走り出す。こまかな作業による技術も、勘に頼る経験もすべてが前時代のものになりました。

あらためて眺めてみると・・・。 あれ?すこし変だな。


「画竜点睛を欠く」とはこのことかしら。ほぼ完成しているけれど肝心な一点が抜け落ちているので全体に不都合となる・・・。
以下次号、「クランク交換の作業要領について」(その3 チェンリング交換編)へ続きます。

つづく


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