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Sおおご

完走したゴール地点にて 向かって左よりH立さん、T本さん、O湖

薫風の日曜日、日没の真野湾を左方に見遣りつつ海岸線を七浦に向けて行く3機編隊。

佐渡島一周ロングライドのゴール地点から12km北方に在る宿舎「七浦荘」へ凱旋するところ、全員が目標達成して良い気分です。

今回はT本さん、H立さんが各130kmコース、わたしが一周210kmコースの態勢で臨みました。この日は宿舎よりスタート・ゴール地点までの往復を朝はウォーミングアップとして、夕はクーリングダウンとして24km追加走行しております。つまり当日のお二方の走行距離は1名あたり合計154kmということになります、快挙ですね。

3名が力を合わせて取り組む自己目標、「友情」「努力」「勝利」どこかの出版社の標榜するスローガンのとおりです。

 

「佐渡…」はただ走るだけでなく、ツーリングの風情のあるのがよいです。

宿舎からスタート地点へと向かう暁の真野湾、次の集落へ移動する毎に山越えしなければならない海岸道路。走り終えて放心したように宿舎へ帰る七浦の夕景。

とりわけ尖閣湾を眺望する海岸線が美しかった。

前半は景色に見とれる余裕があるということですか。

参加者が選択したコースの、それぞれの行程にじつに巧みに配置された起承転結のあるコースが「佐渡」の魅力かと思います。

 

今回は晴天に恵まれた大会でしたが、昨年の雨天に勝るとも劣らぬ向かい風に翻弄されました。ちょうどこの時季なのですね、通過する沿道の集落には「こいのぼり」や「吹き流し」やらが空中遊泳しております。単純に考えれば、島の西側が向かい風なら東側は追い風を期待するでしょ。ところが島内どこへ行っても彼らはわたしの進行方向と同じ方角に向かって泳いでいるように見えるのです。これは楽しませてくれるなあ…。明らかに風を背に受けて走っていると感じられたのは全行程のうち一部しかありませんでした。

 

わたしは前半の100kmは意欲的に消化し、その後は相変わらず向かい風となった残りを適当にこなしてきました。午前中は体力にもゆとりがありますので、平坦路はもちろんのことそれに続く二つの峠も難無く通過。この区間は佐渡いちばんのわたしの「お気に入り」です。 そして向かい風に抗いつつ淡々とクランク軸を回し続ける昼下がり。

ゴール前30kmに立ち塞がる大きな二つの峠。

エンジンと機体に偏った負担を掛けず、故障を発生させないよう算段をつける技術。風向や日照など常に変化する状況にあって、決められた時間内で限られた体力を効率的に燃焼する技術。これらの技術を駆使し愛機を駈る歓び、自分と乗機の一体となった走りに陶然とするのが自転車の極みと言えましょう。言い換えれば自転車の麻薬性とでも申しましょうか。ま、これなら合法的にして副作用もなくハイな気分になれるのが嬉しいです。

 

165mm長のクランクを使用し、1分間に回すクランク軸は常に85回転前後に心掛けました。平坦路は50丁×17丁で巡航、山越えは34丁×25丁で喘ぐようにして登ります。 けれどこれが楽しい。何故ならその上りの頂点の先には、海岸まで一気に降下する九十九折りの長い下り坂があるのですから。

下りきって道が平坦になるまでは50丁×12丁を踏みながら降下していきます。 独コンチネンタル製「スプリンター」というチュ-ブラータイヤは、転がりも軽くコーナーでもよく粘ります。スリック状のトレッド部はもちろん、サイド部も接地しているのかと思うくらい機体を倒してコーナリングしてもグリップするのが頼もしい。

昨今流行りの700C「WO」タイヤと比較すると、高圧時の乗り心地にも優れているように思えるが世間の評価はいかがだろうか。カーボンリム車輪との組合わせはまるで蝶の翅のように軽量で、踏み出しも軽ければ巡航速度からの中間加速も鋭いです。

 

チェンリングをインナーからアウターへ変速する動作を繰り返していますと、再び変速ワイヤーが伸びてしまったのでしょう、昨年同様にアウターの歯に乗らなくなってしまいました。あのときは最後の30kmを前インナーだけで走ることを余儀なくされ、平坦路も下り道もギヤ比が合わなくて往生いたしましたっけ。

しかし今回は昨年の戦訓に学んでおります。対策としてブレーキレバーの左右握り部にワイヤー微調整用のアジャスターを装着しましたからね。走りながら左側のこれを手前の方向にちょっと回してやりますと一瞬の後見事に前変速機が復活しました。ワイヤーの長さにしてほんのちょっと、0.5mmくらいのものですからまるで精密機械のようなデリケートさです。

自ら組み上げた自慢の愛機「クォータ・カリバー」 カーボンモノコック製

午後の向かい風の平坦路、気が付くと自分の後方にぴったりと5名くらいが追従しています。どうせ自分の走りには影響ないですからそのまま15kmほど曳いてあげました。自分をあてにしてくれるなんてなんとなく気持ち良いですね。人助けをしているというか、世の中に役立っているという気もして張合いがあります。

その後の緩いけれど長い上り坂で後方の殆どが千切れてしまいましたが、直後に付いていた青年はわたしを追い抜いて行きました。

追い抜きざま、ご丁寧にも「交替しましょう、今度はわたしが曳きますよ」と声をかけてきましたけどね。「いやいや、あなたは先に行きなさいよ」「俺は独りでいくのが好きだから」と送り出してあげました。

ロングライドはね、自らの出力を頼りに単独で走ることこそが真の実力、真の醍醐味なんだよな。

ゴール直後 完走の興奮覚めやらず

規定の距離を走り終えて、さらに宿舎まで走了したとき眼前に拡がる日本海の夕景。

陽光が水平線に没する寸前の七浦海岸の夕景がきれいです。

いままさに沈もうとする太陽が赤い帯を曳いて海面に反射しております。

これをH立さんが写真撮影しました。

仮に「印象:日没」とでも名付けましょう。

モネの絵画「印象:日の出」(クロード・モネ1873年作)という著名な作品を皆さんご存じかと思いますが。

日の入りと日の出の時空間は対極ですが、どちらも作者の心象をよく表していると思う情景でした。

祝勝会にてT本さん、H立さん  手前の刺身大盛りの中央はヒラメ丸ごと一尾

Sおおご

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