遅筆堂文庫を訪ねて
2010.9.20 ~ 9.22
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レポート本文

Narita

最近、なんだかんだでちっともYMCCのクラブランに参加できていない私ですが、今年はどうしても決行したいランがありましたので、遅い夏休みに単独行をして参りました。例によって道に迷ってばかりのランでしたが、ここに報告いたします。

今回のテーマは、「遅筆堂文庫を訪ねて」です。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、先頃亡くなった井上ひさし先生の号が「遅筆堂」です。先生は、劇団こまつ座の座付き作家としても、小説家としても、とにかく「遅筆」で知られた方でした。とにかく資料魔です。新聞だけでも何社もとっておられて、同じ内容の記事について読み比べられるというくらいですから、資料をじっくりと読み込まれているうちに、原稿・脚本締め切りに遅れてしまい、下手をすると劇団の公演開始自体遅れてしまうというようなこともしばしばありました。

先生は、山形県置賜郡川西町のご出身で、その後ご家庭のご事情により私の故郷仙台で中学・高校時代を過ごされており、その意味で身近な作家であり、大好きな作家でもあったのですが、学生時代にこまつ座の「日本人のへそ」「唐来参和」「化粧」などの舞台を見てからは、ますますファンになりました。

今年4月に残念ながら亡くなられ、先生が資料として集められた膨大な図書類を寄贈されたという故郷・川西町の遅筆堂を訪ねたいという気持ちがいよいよ高まり、この夏休み、とうとう決行に至りました。

1. 9月20日(月) 米沢市内

倹約してるかー!! by鷹山
倹約してるかー!! by鷹山

まずは新しい輪行袋に愛車を詰めて、8:08東京発のつばさ105号に乗り込みました。米沢着は10:23、駅に降りてみると、東京とは違うひんやりした空気に包まれます。まずは、余計な荷物(リュック1つですが)を預けに、駅裏のビジネスホテルへ。フロントに預けちゃいます。

まず午前中に上杉神社、伝国の社(米沢市上杉博物館)をちょろちょろと見て回ります。

この町の売りは、とにかく『天・地・人』と「上杉鷹山」であることがよくわかりました。

からみそラーメン(750円)
からみそラーメン(750円)

お昼は、米沢ラーメン。手もみ縮れ麺+からみそが有名。市街地の外れのお店で、辛味噌ラーメンを注文しました。

相当、辛いです。ここのお店、ほとんど地元の常連さんばかりとお見受けしましたが、来る人来る人頼むのが、みんな「中華の大盛り」。そっとのぞくと、死ぬほど大盛りでした。私の食べた普通盛りもかなりの量なのですが……地方の食堂は侮れません。

米沢牛の牛すじ煮込み(塩味)
米沢牛の牛すじ煮込み(塩味)

午後からは、上杉家廟所、春日山林泉寺(直江兼続らのお墓がある)を見て、まあ3時過ぎればいいだろうってんで、「東光の酒蔵」へ。自転車なので、試飲は5~6杯にとどめましたけど。

夜は、米沢牛は食べたいけれど、ステーキやすき焼きは敷居が高いので、ホルモン居酒屋『成ル』へ。米沢牛の牛すじ煮込み、米沢牛の刺身、米沢牛のギャラ串という弱気なラインナップではありますが、地酒も2合くらいいただいて(たしか、「香坂」ってのとなんか)、たいへん美味しゅうございました。

2. 9月21日(火) 米沢→川西町→高畠→赤湯

外観(一部補修中)
外観(一部補修中)

朝は現・山形大学キャンパス内にある山形高等工業学校本館へ。明治23年に竣工したこの古い校舎は、平日9:00-15:00なら、守衛室に断って中を見学できます。

日本工業界におけるたくさんの偉人を輩出していることはよく分かったのですが、いかんせん展示がマニアックすぎて、あまり楽しめませんでした。「真空管の歴史」とか「水管式汽罐の略図」とか言われてもなあ。一昔前のまじめな学校の文化祭展示を見せられたような……。その後、気を取り直して、川西町に向かいます。

品種名「土俵入り」でかい!
品種名「土俵入り」でかい!

米沢市から川西町は、16キロほど。山形は、道路が広く、車があまり多くないので、私のようなものにはたいへん走りやすいです。舗装もきちんとしています。 遅筆堂文庫の入った「川西町フレンドリープラザ」は、とても大きな建物ですぐに見つかったのですが……「本日休館」。たいへんなリサーチ不足! 祝祭日の翌日は休館でした(昨日来れば開いていたのに……)。

失意のうちに、本来行く予定のなかった川西町ダリヤ園へ。思いがけず、きれいな花に心慰められました。ダリヤって、本当にいろいろな種類があるんですねー。なかなかいいところで、近在の人たちの憩いの場になっているようです。

あずま湯
あずま湯

その後、高畠を回って赤湯へ。素泊まりの民宿でしたが、歩いて1分の所に温泉の公衆浴場「あずま湯」があり、100円で入れます。宿の人がチケットをくれて、シャンプーも石けんも、みんな貸してくれました。3,300円の客にこんなによくして下さるなんて!

夜は、近くの焼鳥屋さんへ。ここは、馬刺しが美味かった。飲んだのは、地酒「米鶴」×3合。地の酒には地の食べ物がよく合います。

3. 9月22日(水) 赤湯→川西町→高畠→米沢南公園自転車道→米沢

川西町フレンドリープラザ
川西町フレンドリープラザ

朝方から雨!

途方に暮れていたら、宿のおばさんが「川西町フレンドリープラザって、あたしも行ったことないから、車に自転車ごと積んでいってあげようか?」とまで言ってくれます。そこまで甘えられませんので、チェックアウトの10時ギリギリまで粘ることに。そうしたら、8時半頃から徐々に雨が上がってくれて、なんとか自力で出発できることになりました。

県道102号線をひたすら走り、私の自転車旅行史上初めて、迷わずに目的地に到着! ツール・ド・フランスで優勝したようなガッツ・ポーズでフレンドリープラザの駐車場に入ります。

遅筆堂文庫入り口
遅筆堂文庫入り口

建物は、主に劇場と図書館で構成されていて、図書館部分の中に、井上ひさし先生が資料として収集した図書を寄贈された遅筆堂文庫があります。ここの本は、館内限りで閲覧できます。

ありとあらゆるジャンルの本があって、小さなところならこれ一つで立派な図書館になるくらいの分量の本がありました。これは、家の根太が傾くわけだ、と思いました。

感動している様子
感動している様子

名残は尽きなかったのですが、世間は平日のことでもあり、退勤ラッシュにぶつかる前に東京に着いてしまわなければ、ということで、泣く泣く遅筆堂文庫をあとにしました。

次は、今回の米沢のもう一つの目的である置賜自転車道の南半分-米沢南公園自転車道を走って、米沢に戻ります。

看板が出ています
看板が出ています

本来、川西町によるという目的がなければ、米沢南自転車道からさらにブドウマツタケライン等というおいしそうな名前の道路も通って米沢から直接赤湯まで走ったのですが、第一目的が遅筆堂文庫訪問なので、上半分は今回は走っていません。 川西町から高畠方面まで走り、最上川にぶつかったところから、川沿いの自転車道に入ります。

米沢までの道すがら、すれ違ったのはランナーが一人だけ、という独占状態の自転車道。見渡す限り黄金色に輝く田んぼと川縁の緑ばかりという素晴らしい環境で、のんびりと走ります。

イギリスの女性旅行家イザベラ・バードがこのあたりを「東洋のアルカディア」と呼んだそうですが、こんなところでのんびりと暮らせたら楽しいだろうなあ、と確かに思わせられます。

見渡す限りこんな風景
見渡す限りこんな風景

すいすいと走って米沢に着き、13:42発のつばさ118号に乗り、東京に戻りました。

今回3日間のトータルの走行距離は120キロほどで、そのうち20キロほどがうろうろと迷った分だと思われます。私にとっては、傷は浅い方です。 こうして楽しい夏休みは終了でしたが、だいぶ涼しくなってきたので、またどこかに出かけてみたいと思いました。


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