2013年8月クラブラン 「那須野が原 明治元勲の別邸めぐり」 事務局:O湖 |
■ホームへ | |
↑上のページへ | ||
←前へ | 次へ→ |
「事前協議のこと」
8月23日(金)天気予報を見て悩みましたよ。本日の那須塩原市に大雨、雷、洪水注意報が発令されています。明日はクラブランをこの地区で開催するというのに、天候リスクをいかに判断するか…。
予報では、24日の午前6時くらいから午後3時くらいまでは、いちおう雨も上がるということです。ひとりでくよくよしても前に進みませんから、執行部のO笠原さんとH本さんに相談しました。
結論は催行です。天気図や周辺状況を勘案し、天候は回復基調であると判断しました。クラブ活動のリスクは、この判断を担当者独断で済ますか、複数で協議するかでおおいに違うのかもしれません。当クラブでは、重要事項は執行部で打ち合わせにより決めるようにしています。またさらに重要な決めごとは、月1回開催するミーティングで会員に諮り協議して対応します。当クラブには学識経験豊かな会員が多く、百出するみなさんの意見をありがたく思います。
水田として開拓された那須野が原を行く
「催行当日のこと」
明けて24日(土)午前10時過ぎ、わたしはJR東北本線西那須野駅前に降り立ちました。ああ久しぶりだ、本日は涼しい。前夜の雨を受けて曇天ではあるけれど、湿度の少ない微風を心地よく感じます。本日の参加者はO笠原、S山、T田、T地、H田、H本、Y本、O湖の合計8名。参加機種について、わたしは軽量な20吋小径車を持参しました。他には同径のミニベロがもう1機。24吋中径車2機、26吋マウンテンバイク1機、700Cロード3機の顔ぶれです。走行距離は約10kmの歴史と人物探訪です。
集合時間は11時ですから、すこし早目に到着しました。じつは先般サイクリストの達人に「乗り方教室」のご教授を願った際、熟練者は仲間の輪行作業を手伝ったり、適切な助言などするようにとご指導いただきました。それで早朝6時に横浜を出立して、自分の機体は先に組み立てたわけです。
やはり早目にO笠原さんがいらされました。さすがです、「お教室」に出席した受講者は学んでおられる。ところが時間になっても他の大多数の姿がみえません。電話連絡によると、駅の西口に集まっているとのこと。案内メールには東口駅前ロータリーと明記したのですけれどね、これからは要件を確実に伝える連絡文の書き方を身につけようと思いました。
西口に集まったうち1機に不具合があるとの情報がありましたので、とりあえずみなさんこちら側にまわってきてください、修理なり調整は講習会として臨時開講しますからとお願いしました。
なるほど、当該機は24インチ径×1インチ幅の、見た目にはかなり細い前輪タイヤに障害を発生していました。黒色のトレッド面が飴色をした下地コードより浮いて剥がれかかっているのです。一見するとたいして走行していないように見受ける新しいタイヤですし、実際にトレッドも摩耗していません。仮に段差を乗り越える際に打ち付けたとしても、トレッドが剥がれるなんてのは掟破りです。どうしてこのような状態になるのか、わたしはタイヤの製造不良かと判定しました。路面からの負荷の軽い前輪でこのようになるのですから、ずいぶんと高級品ですよね。
さらに観察すると下地コードは切れていないようなので、空気圧を低めにして走行してもらい、経過観察することにしました。
さてさて珍しや、アルミ管を組み合わせて接合したように見えるこのミニチャリのフレーム。アルミフレーム特有の、剛性確保のため太いダウンチューブ以外は、わりと華奢に見える細いアルミ管を使用しています。そしてハンドルステムの固定法はクイックレバーで締めるバンド式です。ヘッドチューブ上端に縦方向の割りが入っていて、ステムを差し込み、この部分をクイックバンドでひと締めすればハンドルは固定すると目論んだらしい。実際にはクイックレバーの反対端を受けるナットの径が小さくて、指でつまんで締めても力が入らない。クイックレバーの締め代を満たすところまでナットを締め込むことができないわけです。その結果は?
ステムの固定が不完全なので、簡単にハンドルが左右方向にまわってしまいます。走行中にハンドルを急に捻ったりしてこの症状が出たら、あさっての方向に走り出しますから焦るでしょうね…。
仔細に眺め廻してみると、ドロップバーに取り付けた左右ブレーキレバーの握り(フーデット)部の締め付けトルクが甘く、進行方向へ向けて前すぼみのトーインになってしまっています。他にもサドルの固定部品に鉄板プレス製の廉価なものを使っているため、角度調整の精度がよろしくなかったり。たいして走行距離を重ねてもいないのに、前変速器を作動するワイヤー止め部の固定が甘く、緩んでしまってアウターリングへチェンが乗らなかったり。まるで自転車の体をなしていません。とりあえず最小限の安全を確保して整備しました。
フレーム製造と部品の組付けの双方に問題があります。この商品を仕入れた販売店も、組み立ての技術を問われますね。もっとまじめに商売に取り組んでいただきたいと切に願います。
消費者軽視の製品に搭乗中、もし消費者に被害が発生したら製造物責任法(PL法)によって補償されるのだろうか、じつに不安に思いました。ま、被害が発生してからでは遅いですよね。さわらぬ神に祟りなし、この手の製品は敬遠するに限ります。
一行はゆっくりと出発しました。駅から300mほどに在る、大山巌の別邸へ向かいます。次に大山家墓所へ。さらに乃木別邸へ。そして三島弥太郎別邸(現那須野が原博物館)へ向けて走っていると…。
信号機で停止したところ、後方から呼び止められました。振り向くと、かの前タイヤ損傷部から膨れたチューブがはみ出しています。あっというまもなく乾いた音とともに破裂しました。う〜ん、トレッド剥がれはやはり段差に打ち付けたせいなのか…、そのとき下地のコードも損傷していたのだな。その場でパンク修理のため開腹手術に及びました。
幸いにもパッチ1枚に収まる範囲の破口でした
あれっ?タイヤがゆるいよ! いやあ勘弁してくれ。ゆるゆるのビードのせいなのか、周長の短いリムのせいなのか。タイヤに指を掛けてめくってみたら、そのままリムから外れてしまいました。このタイヤ、もしかしたら8気圧くらい充填して走行したら、何かの拍子に外れてはしまいませんかね。
チューブに大きな穴があきましたが、幸いにも長く裂けたわけでなく1枚のパッチで塞がりました。はらわたのチューブがこぼれるほどに拡がったタイヤコード破口部ですが、同行の仲間に提供してもらった買い物レシートを二つに折って、タイヤの裏側から当てましてね。携行インフレーターで4気圧くらいに入れてみましたところ大丈夫そうです。じゃあこのまま行ってみようか。
ツールなどの自転車競技では、器械故障を発生しても後方からサポートカーが駆け寄り、支援要員がこれを直したり交換してくれますけれど。いっぽうでトライアスロンなどでは、すべての障害を選手自身で克服して再び走り出すことを要求されます。
自分で地図を読み、自分の力で走り、故障しても自分で修理して再び走り出すのが自転車の楽しみです。構造を知り、部品組み付けも調整もすべて自分でできるようになったら、自転車はほんとうに楽しいですよ。
「サイクリングで歴史を振り返り、現代を考える」
大山巌は薩摩藩士の子に生まれ、幕末から維新期を官軍の指揮官、日清日露戦役を通じて陸軍司令官として戦局を牽引した人です。この人の別邸の敷地は、いま栃木県立那須拓陽高校になっています。ここは土日の見学は不可ですので外から校内を見渡すだけ。なんとなく見学した気になって、駅方面へすこし戻り、大山家の墓所へ参りました。きれいに草刈りされて玉砂利の敷かれた立派な参道を行くと、正面に墓所があります。門扉より中へは進めませんが、弾頭を被せたような形をした大きな墓石を扉越しに眺めることができました。
乃木神社をめざしていきますと、乃木別邸は広い敷地内の本殿から奥まったところに静謐な佇まいを見せております。納屋には畑を耕作するための農具、稲を脱穀するための器械、牧草を積むフォークなど多種の農具が展示されていました。この地に休職していた乃木陸軍大将も、これら農具を使って営農した時期があったのでしょうか。いろいろ想像をめぐらせました。
隣接するため池は、奥さんの名を戴いて静沼(しずぬま)と呼ばれます。水面を鴨などの水鳥が数多く群れ、水面下には黒々とした大きな鯉がこれまた群れをなして泳いでおりました。
静沼畔にて
日露戦役では、一説によると日本軍の戦死、戦傷死者はあわせて約55千人と謂われております。またロシア側にも多くの人的損害があったわけで、両国ともこの時代に生まれた人はたいへんな目に遭ったとつくづく思います。これが時代だとはいえ、列強に呑み込まれないために人々が国家に大きな犠牲を強いられた世代に瞑目するばかりです。
着剣した歩兵銃を持ち、要塞砲や当時の新兵器機関銃の十字砲火の前に立ちすくむ自分を想像したら。銃砲弾の弾幕のなかをときには全力で駆け、ときには匍匐して泥まみれに地面を這う自分を想像したら、腹部を撃たれうずくまる自分を想像したら、生まれた時代が悪かったなどと他人ごとのような気にはなれません。戦争放棄を謳う憲法のもとにいま生活できる時代がいかにありがたいか、しみじみと実感します。
もとより戦場は日露両国の国外だったのですから、かの地に住まっていた人たちにとっても迷惑千万であったに違いないと思います。また翻って現代にも戦争や内乱によって飢餓にある人々のことを想うと、なにかできることはないだろうかと思案するのであります。
2013年8月クラブラン 「那須野が原 明治元勲の別邸めぐり」 |
■ホームへ | |
↑上のページへ | ||
←前へ | 次へ→ |