最終更新日: 2009年10月29日
クラブラン>2009年>9月 プロジェクト鳥海山>メカ編
メカ編「鳥海山」
 本年最大のYMCC企画「プロジェクト鳥海山」も無事終了しました。
企画立案・各種手配・案内者のO寺さんに感謝申し上げるとともに、S石さん始めお世話になった皆様にお礼申し上げます。
さてメカいじり(メカ遊び)派のわたしは、この方面から今回のツアーを切り取ってご報告いたしましょう。
【 泥除け

第2日目、昼近くになって雨も弱まり雨宿り先からの出発です。
長い下り坂、路面は雨水が張っていて前車の撥ねる水しぶきが勢いよく顔に掛かります。
こりゃ堪らんな、泥除けの無いチャリは放水車のようなもんだ。
このような時はたんと車間距離を空けて、なおかつ真後ろにはつかないことですね。
先頭車両のO寺さんと2番機W田さんは泥除け装着ですから直後のひとは安心です。
W田さんは小径車でありながら泥除けはもちろん、ご丁寧にも前泥除けの後端にはマッドフラップまで装備してあります。
さすが英国設計、小径車とはいえツーリングの本質を見抜いている。
わたしも泥除け装着派、前側は後用のものをカットして使い前輪に深くかぶさっています。
自分も濡れにくいし後ろのひとに水を掛けません。

【 タイヤ 】

冬師(とうし)の集落を抜けて側道に入ると未舗装になりました。
まあ路面も締まっておりますし、勾配もなだらかです。
この道で湿原の池までの往復はおおよそ3kmくらい。
650×42Bバルーンタイヤを履いたわたしには絶好の路面でした。
同行7名のうち700Cの細いタイヤが4名おられます。
700C(×23C)は細くて高圧なので接地面が少なく、舗装路では軽く快適な「走り心地」が楽しめますけど。
こういうときには土や小石の間にタイヤがはまりやすいようで。
なかには登りでタイヤがグリップせずズルズル滑っているひとも…。
未舗装路でも技量の限りを尽くして細いタイヤで走る楽しみ方もあります。
楽しみ方の問題ですから、とやかく申すことではありませんが。
中距離ツーリングの場合はすこし太めのタイヤの方が「乗り心地」が快適でしっくりするかと。
同じ700Cでも×25Cくらいにするとより好ましいかと存じます。

【 荷 物 】

2泊くらいのツーリングとなると携行する荷物も増えますよね。
ザックに背負うなり、荷台を介して積載するなりいずれにしても重量増となります。
以下まったくの私見ですが、経験から得た結論です。
このようなとき「安全性」「快適性」を優先すると、「荷物は身につけない」「荷物は自転車に積載する」ことです。
そして「なるべく重心を下げる」、「後輪に負担をかけない」ことでしょうか。
わたしはフロントサイドバッグ仕様です。
左右各ひとつ吊り下げ式バッグを前輪に。
走行特性は、ハンドリングがしっとりした感じになります。
これは好いです、一度経験すると病みつきになりますね。
大きな容量で帰りのお土産も入れられますし。
2泊程度のツーリングなら片側の容量だけでも余るくらいです。
このような場合、いちおう二つに分けて均等の重さにして前荷台に懸吊しますけど。
またハンドル部の空間が自由になりますので、いろいろな持ち方ができて楽しいです。
わたしはドロップバーの上部、水平になっているところをフラットバーのように持ち巡航するのが好きです。

【 車 輪 】

見通しのよい舗装路の交差点で落車が1名、十字路の右折です。
ま、どおってことのない場所でしたがご本人の心に一瞬の空白が生じたのでしょう。
充分に減速することなく、速度過剰のまま曲がり切れずに路側の側溝に飛び込まれたそうです。
20mほど先行されていたところ、わたしが後方確認のため振り返ったその一瞬に目の前から掻き消えるようにしてお隠れになりました。
そのときは既にコーナリングを終えられ、遥か前方に移動されたのかと思ったのですけれど…。
う~ん、鮮やかで見事なコーナリングだ。
あれほど多量の荷をザックに背負っていて飛燕のような身のこなし、只者ではないな。
感心しつつその十字路を右折し終えたとき、窪地になった左側方の藪から這い出されるお姿が。
路外から藪をかきわけて機体を引っ張り上げ、一息つかれているところへ皆が駆けつけました。
目撃者によると一瞬悲鳴のような声が聞こえたとか。
日頃の人徳でしょうね、幸運にも怪我なく済みました…が、前車輪が身代わりとなりました。

700C×23Cタイヤはトレッドからサイドウォールにかけて3か所も大きく裂けております。
同様にチューブも数ヶ所、破孔が大きくこれは致命傷です。
リムもブレーキシュー当たり面が1か所、衝撃で外側に向けて「くの字」に膨らんでおりました。
それでもリムは縦横に振れていないのが不思議なくらい。
スポークも切れず曲がらず、最近の完組ホイールの強さには驚きます。
問題は裂けたタイヤですね、それも大破孔となった3か所が接近しておりまして。
しばし沈思黙考、自分の記憶にある修理データベースから資料を探しますが該当ありません。
似た傾向のはあるんですけどね、たとえば本年4月の新潟行(コミュニケーション欄「プライベートランれぽーと」参照)とか。
同じく8月の養老渓谷(同欄同れぽーと参照)とか。
でも今回ほどの重症は過去に記憶がありません。
単にチューブ交換しただけでは内側からチューブがはみ出して走ることができませんし。
タイヤ内側から破孔をふさぐべく何かあてる必要がありますが、ガムテープのような材料がありませんし。
ああだこうだと皆さんからアイデアが出まして、それを試作するようにタイヤに当ててみたりしますが決定打がありません。
そこへ空のペットボトルとナイフが出てきました、S石さん御主人の提案です。
このペットボトルの側面をナイフで切り取り、タイヤの内側から当ててサイドウォールの補強としました。
これは好い!タイヤサイドがしっかり補強されて変形せず、チューブもはみ出しません。
ただしリムの変形した部分でタイヤが外れることが懸念されたので、あまり空気圧を高くできませんが。
H立さんにはリム打ちパンクしないようゆっくりと走っていただくことにして、このまま走り出してもかなりいけそうです。

遅い昼食をしてから、山地を一気に下るべく象潟(きさかた)を目指しました。
途中H立機が再度パンク、やはりあの損傷では難しいか…。
ちょうど見晴らしの良い展望台まで来たところでのことでして、同行の皆さんも休憩しておられました。


タイヤを外して開腹してみたところ、先ほど内側からあてたペットボトルの補修材に問題が。
サイドウォールの補強という機能はしっかりと果たしてはいたのですけれど。
補修材の厚みがチューブを押して、摩擦やら圧力をかけてチューブの側壁を切ってしまうのですね。
補修材の縁がチューブに触れる部分が、カッターの歯を当てたかのように見事一直線に切れておりました。
仕方がない、まだ陽も高く思えるし時間も少しあるように思えましたので、パンク修理の実演としてパッチ貼りを披露することにしたのですが。
パッチを何ヶ所貼っても次から次へと穴が見つかり、チューブがフランケンシュタインのようにつぎはぎだらけになりました。
結局チューブは穴だらけで使い物になりません、こんなにたくさんパッチ貼ったのに。
再度チューブを替え、残念ですがペットボトル補修材も外しました。
今度はS石さん奥方より提供いただいた、アルミメッシュで裏打ちされたガーゼでタイヤ破孔を内側からふさいでみました。
これが新たな補修材です。
そして事故時に裂けて使用不能となったチューブを活用することに。
この裂けたチューブを適当な長さに切断し、強度を勘案して3つ折りにしてガーゼに当てました。
これで復元した車輪に恐るおそる空気を入れていくと、第1次修理よりさらに空気圧の低い状態で、本当の「応急修理」です。
これは危ないなあ、この低圧ではどこまで行けるだろうか…。
圧倒的に速度の違う本隊は先行し、H立氏と2機でそれはもうゆっくりと山を降りて行きました。

山の日暮れは早いです、この頃には残照の薄暮となり寂しいやら心配やらで泣き出しそうになるのを堪えて走っておりました。
ほぼ平地になった時点でこのチューブも寿命が尽きました。
無線電話で本隊を呼び出し救援を乞うたところ、ありがたくもW田機が新品のチューブを携えて引き返してくれました。
今度はS石さん所有の新品チューブをお借りしての第3次修理、象潟を間近に臨みこれでなんとかしのげるだろうか。

日の落ちた水田のなかの一本道を3機編隊でしばらく行くと、対向してくるチャリの燈火が。
O寺機です。本隊を宿舎に誘導後、再びわたしたちを誘導するために引き返してきてくれたのでした。
先導してくれるO寺機の後ろ姿の頼もしいこと。そうでなかったら日暮れた象潟近郊で路頭に迷っているところでした。
翌日に象潟所在の自転車店にて新品の700Cタイヤとチューブを入手できました、僥倖です。
宿舎従業員の方々の「おもてなし」の心にしみじみ感じ入りました、厚くお礼申し上げます。
自転車というのは、走る面白さといじる面白さとの両面が楽しめる、実に奥行きの深い趣味でありスポーツですよね。

                       S.Ogo