2013年7月クラブラン 正しく、安全で楽しいサイクリング教室 YMCC事務局 O湖 |
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正しく、安全で楽しいサイクリングのノウハウを学ぶため、7月の暑い日の朝、わたしたちは北総線「印西牧の原」駅に集合しました。この日は様々なサイクリングの指導を経験しているベテランサイクリストを先生にお迎えしての「正しく、安全で楽しいサイクリング教室」の開講です。YMCCからの参加者はF本、H立、O笠原とO湖の合計4名です。
輪行袋を担いでわたしが改札を出たとき、先生はもう到着されていました。既に自宅より約35qを走ってこられたとのことで自転車に乗ることが本当に好きなことがわかります。参加者は愛機を組み立てながら、最近の自転車事情など先生にいろいろ情報を教えていただきました。
出発前のブリーフィングで、行程説明や指示事項などの説明を受けます。
そのなかでわたしが「サイクリングの手信号」という言葉を使ったところ、じつはこの言い方は誤りだそうで「ハンドサイン」と呼ぶのが適切とのこと。理由は「"手信号"とは、道路交通法で定義され、警察官が道路の交通整理をする合図」のことで、講習会などで道交法を知っている人の前で間違った言い方をすると信用されないのでご注意を、と先生の指摘がありました。
そんなやり取りをしながら準備体操をしました。身体主要部のストレッチをしながら、脳と身体をつなぐ神経系の連絡を潤滑にします。走り出し直後に事故は発生しやすいので、脳からの指示を身体各部に速やかにしてかつ確実に伝達することによって防ぐためだそうです。この体操は、公益財団法人 日本サイクリング協会(JCA)会長代行にして、東京サイクリング協会会長である歯科医師、加藤先生の考案によります。
参考:「快適サイクリングのためのストレッチングレッスン」(JCAホーム ページより)
※「JCA」とは、自転車で遊ぶ人たちを増やし、サイクリング環境を良くするために社会的活動をして社会に貢献する公益財団法人です 。
ストレッチを済ませると先生がやおら飴を配りながら皆の年令を聞き始めました。何のためかと思っていたら、走行時の並び順のことです。最年長のF本氏から年令順に並び、立場上O湖はしんがりを任されました。そういえば以前先生から「グループ引率の基本は高年者、初級者を基準にすること」と聞いた事を思い出しました。なるほど、出発する前は皆気分が高揚していて、走行の順番決めは忘れがちになるので、要注意だなと心中にメモしました。
5名の小集団は一列になって走り出しました。天気予報では「晴れ」だったので猛暑を覚悟していましたが、出だしは曇天でまずまずの体感気温です。車道の左端を走行し、それぞれが2メートルくらいの適正な間隔を保って巡航します。先生は上体の安定した前傾姿勢で、時折ハンドサインを出しながら粛々と小集団の先頭を率いて行きます。
一行は先生のハンドサインのとおり手を上げ、指し示して右左折をします。前走者の指示を後方に確実に伝えるハンドサイン。後方から追い上げてくる自動車や、対向してくる自動車に、自転車の意図することを確実に知らせるハンドサインを学びました。
O湖のすぐ前を走るH立さんも下記のように感想を述べておられます。
「先生は自動車と同じく、早めにハンドサインを出すことを実践されていて、それが強く印象に残りました。いま前方は停止信号だけれども、もうじき青信号に変わるだろうというとき、ここで停止サインを出すのは恥ずかしいというような誤った感覚を是正することも大事と悟りました。」
先生が印西市役所本埜(もとの)支所の駐車場で一旦停止しました。先生が走りながら時折振り返ったり、直ぐ後方のF本氏と何やら短い会話をしていたりしていたのは誘導ペースの遅速の確認をしていたこと。また後続全体の様子を把握・確認していたという説明がありました。わたしはこれも心中メモに加えました。
県道291号線に入りますと、交通量もにわかに増えてきました。印旛沼に架かる甚兵衛大橋を渡り、コンビニで小休止。ここでも先生は皆にペースの確認をしています。徐々に雲が取れてきて暑くなってきたあたりで、道路は国道464号線に変わり、走行距離もいつのまにか10Kmを記録していました。さらに3kmほど進んだ辺りで先生が「10年以上通ってきたが気がつかなかった」と急に寄り道を提案。先生の愛車はロードレーサーですけれど、気持ちはやはりサイクリストだと嬉しくなりました。ハイペースなら見落とすであろう、小さな案内看板を頼りに国道を外れて谷地へ降りたところに在る、「佐倉宗吾(木内惣五郎)の生家」を見学しました。
江戸時代前期、佐倉藩の年貢取り立ては苛烈を極めていた。この窮状に村の名主である木内惣五郎は、時の四代将軍家綱に直訴したところ認められ、多くの領民を救った。しかしこの直訴によって惣五郎夫婦は磔刑に処せられ、その子らも死罪となってしまった…。
当クラブきっての歴史通であるH立さんの補足によると、江戸時代初期の武力による専制的な武断政治が、この四代将軍家綱の時代より改められ、学問や法制によって統治する文治政治に変化したそうです。惣五郎の直訴が幕府に取り上げられ、苛烈な年貢取り立てが減免されたことはその表れなのだとか。
中庭の広い、農家特有の造りをした家屋には、惣五郎の子孫が居住しておられ、忙しくないときには見学者に説明もしてくださるとのことです。
この生家を辞して国道へ急坂を上って戻り、なお1kmほど進むと「宗吾霊堂」がありまして、先生の誘導でまた寄り道です。この霊堂は、窮乏から救われた多くの領民が惣五郎を義民として祀ったものです。現代にあっても信仰に厚い多くの参詣者を集めており、日頃信仰心など全く持たないO湖も、この日ばかりは俄か信者になり、惣五郎一家の犠牲的なヒューマニズムを敬い畏れ彼らの冥福を祈りました。
霊堂を出る頃には雲が取れ、完全に猛暑日和に突入。ここから標高差にして40mくらい上って丘陵地に出ます。JR成田線を渡ると成田市街へ入りますが、そのまま通り過ごして国道51号線に出ます。さらに京成成田駅を過ぎてしばらく行った先を右折してダラダラ坂を登って行きます。
先生がF本氏に併せて淡々と小集団を引いているのが前方視界に入っております。けれどもわたしたちの気持ちの方が先行していて、年甲斐も無く期待感にワクワクしています。なぜかというと山影に隠れて機影は見えずとも、時折聞こえるジェット機の離陸音が段々に大きくなってきて、飛行場に近づいていることを実感するのです。先生の後をついて坂底の交差点を左折したとたん、目の前の道路の上を離陸直後の旅客機が轟音と共に横切って行きました。僅かな坂を上がった左側の「さくらの山公園」に到着です。
公園駐車場の農産物直売所と向かいのコンビニでお弁当などを購入し、桜の木陰に陣取りました。滑走路の北端間近なので、わたしたちの頭上をかすめるようにして、機体塗装に様々なカラーリングを施した旅客機たちが離陸していきま・キ。主脚を折り畳みながら、視界に余るほどの近くを急上昇してゆく、じつに迫力ある光景に目を見張ります。「そういえば昔『パンナム(パンアメリカン航空)』なんていう会社あったよねえ」などと話しながら昼食休みの間ずっと首を上げ続けて見上げていたので、午後の部を走り出すと首筋が痛かったです。
昼食後、さらに先生のリードで成田山新勝寺へ。相模湾・東京湾育ちのYMCCメンバーほとんどが初めての参詣。節分にお相撲さんが豆撒きする場所を発見したり、平和の塔を見学したりして山門を後にします。JR成田駅までの土産物屋や、名物なのでしょうか鰻屋があちこちに建ち並ぶ坂道の店を冷やかしつつ、大勢の参拝客をかわしながらダラダラと自転車を押して行きます。登り切る手前にある薬師堂を見ながら、「成田ゆめ牧場」の出店いち押しのソフトクリームでしばし猛暑を忘れました。ここのソフトクリームはとても濃厚なのですがクドくなく、じつに美味しかったです。
本日の行程はこれにて終了、走行距離は約34kmです。ということで猛暑の中ですからね、全員元気にYMCC恒例の反省会に突入しました。駅前の呑み屋を漁るも、時間が15時をまわったくらいの半端な開店準備時間帯です。「幹事準備不足!」の声を背に仕方無しに入ったラーメン屋さん。けれども頼んだチャーシューと野菜炒めが塩味強めで、冷たい緑茶にグッドマッチ。汗となって流れ出たナトリウム補給の好機となり、先程の幹事への非難は何処へやらで皆大満足でした。5人とも皆さん中高年ですから、話題は糖尿病や身体故障など病気や怪我自慢かと思いきや、サイクリングの話題はほんの僅か。大部分は中国と日本の国際関係で盛り上がってしまい、何の反省やら分からなくなってしまいました。皆さんお気付きのとおり、口火を切ったのはO湖でしたが…。
先生に今日の講習ポイントをお伺いすると「出だしに配った塩あめとソフトクリームのおごり」と分けの分からぬことをおっしゃるのです。
先生曰く、「みなさんから今日は充実して楽しかった、先生のおかげ。と云ってもらうことがリーダーとして一番嬉しいので。それを云わせるための仕掛けです」とのこと。これも心中メモに加え、O湖はおおいに参考にしました。
毎度のことながら楽しい時間はアッという間に過ぎて、自走でお帰りになる先生(簡易輪行袋により乗車できるから呑みましょうと悪魔の囁きを続けたが篭絡できず、最後まで冷緑茶を飲んでいた)をJR成田駅前でお見送りしました。先生、ご教授まことにありがとうございました。
この日はハンドサイン以外にも、ギヤチェンジの要点やブレーキのかけ方など先生から多くの走行技術を学びました。交差点などで一時停止するとき、減速しながらあらかじめ軽いギアに変速しておく。ならば再び走り出したときに軽く踏み出せるので、進路が乱れず安全である。また急停車時には、前後輪とも均しくブレーキを掛けるのが基本。軽い気持ちで前輪ブレーキだけに頼ることは、走行バランスを崩し転倒の危険を伴うなどです。
先生は常に同行者の力量、技量を観察しておられました。早い段階にこれを把握することが重要です。本日の走行順は、朝のブリーフィング時の会話から得た情報で決定されました。走行中は常に後続を確認すること。上り坂で後続者を切り離さず、後方についているか気にかけることが肝要です。先生は道路脇のカーブミラーやショーウインド、並走する自動車のサイドウインドを利用して、これに映る像で確認する工夫をされていました。また右ハンドルに自転車用のバックミラーを装着し、これを活用されてもいました。
先生から戴いた講評は、「みなさんライディングやギヤチェンジは基本に忠実です。本日学んだことを持ち帰り、自信を持って周囲に広めてください」でした。今後はYMCCランの際に先生の教えを伝えます。弟子が孫弟子をつくり、正しく安全なサイクリングを伝えてゆくサイクリストの壮大な連鎖となりましょう。
今回は「教室」というタイトルでの軽いワンディツーリングでしたが、天候と案内人に恵まれ、ノートラブルで本当に楽しいサイクリングでした。それまでYMCCのツーリングエリアとしては、成田方面は不思議と視界に入っていなかったです。往路のアクセスは横浜から新橋で都営浅草線に1回乗り換えるだけ。帰りは時間さえ選ばなければ、成田から横浜まで乗り換え無しで帰れるという手軽さです。ビギナー、ベテランに係わらず成田山というお約束の観光地、地域の歴史、そして現代交通の要衝成田空港というごった煮風の軽ツアーが面白かったです(帰路は総武線快速が横須賀線直通なので、2次会もたっぷり楽しめますし)。
YMCC一行は、各自思い思いに輪行袋に愛機を収納し車中の人となりました。
※この日の行程をO笠原さんが「ルートラボ」に掲示してくださいました 「印西〜成田サイクリング」
このサイクリングで学んだことをサイクリストの心得にまとめました。
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